この記事では、映画『スペル(2020)』の結末・ラストをネタバレありで解説し、この映画に関する疑問や謎を分かりやすく考察・解説しています。
映画『スペル(2020)』の結末・ラスト(ネタバレ)
映画『スペル(2020)』の結末は、主人公マーキスがエロイーズたちの呪術的な支配から脱出し、復讐を遂げる展開となる。
物語の終盤、マーキスは自分が監禁されていた家から抜け出し、村人たちの秘密の儀式が行われる場所へ向かう。彼は、エロイーズが自分を**「ボクー」**という呪術的な儀式の生け贄にしようとしていたことを知る。ボクーとは、黒魔術に基づいた呪いの儀式であり、犠牲者の魂を使って力を得るものだった。
エロイーズたちは、マーキスの父親の遺品である「ブードゥー人形」を使い、彼を操ろうとする。しかし、マーキスは自分の内なる力を信じ、呪術を逆に利用してエロイーズたちを倒すことを決意する。彼は村人たちの儀式を妨害し、火を放つことでエロイーズを焼き尽くし、彼女の支配から解放される。
マーキスはついに自由を手に入れ、エロイーズの屋敷から脱出する。そして、待ち望んでいた再会を果たすかのように、妻と子供たちが生きていることが明らかになる。彼らは、マーキスがいなくなった後も希望を捨てずに待っていたのだった。家族と再会したマーキスは、彼らを守ることを誓い、過去の呪術や恐怖から完全に解放される。
映画のラストでは、マーキスが新たな決意を胸に抱きながら、故郷を離れ、新たな人生を歩み始める場面が描かれる。彼はもはやかつての傲慢な男ではなく、自らのルーツと向き合い、真の強さを手に入れたのだった。
映画『スペル(2020)』の考察・解説(ネタバレ)
映画『スペル(2020)』で黒人を主人公にした理由とは?
本作で黒人男性マーキスを主人公にしたのは、単なるキャスティングの選択ではなく、社会的なテーマを描くための意図的な設定であると考えられる。マーキスは弁護士として成功したエリートであり、都会での豊かな暮らしを送っていた。しかし、彼は故郷であるアパラチアの田舎に対して見下した態度をとり、昔の文化や信仰を否定するような人物として描かれている。
一方で、エロイーズとアールを中心とする田舎の住人たちは、古くからの呪術や信仰を守り続ける者たちであり、彼らの価値観がマーキスに対して牙を剥く。特にエロイーズは、マーキスを捕え、「自分のルーツを忘れた者は罰を受けるべきだ」という思想のもとで彼を支配しようとする。この構造は、「成功した黒人が白人社会に適応することで故郷を捨てた」という批判的な視点を暗に含んでおり、黒人社会の中でも議論されるアイデンティティの問題を反映している。
つまり、本作は単なるホラー映画ではなく、黒人のアイデンティティ、階級の違い、そして過去と現在の対立をテーマにした社会的な物語としても機能していると考えられる。
映画『スペル(2020)』に悪魔ラミアは出てくる?
映画『スペル(2020)』には悪魔ラミアは登場しない。同じタイトルを持つサム・ライミ監督のホラー映画『スペル(2009)』では、悪魔ラミアが重要な存在として描かれているが、本作とは全く関係がない。
『スペル(2009)』では、主人公クリスティンが銀行の融資を拒んだことにより、老婆シルヴィアからラミアの呪いをかけられる。この呪いは3日間の悪夢を経た後、犠牲者を地獄へ引きずり込むという恐ろしいものであり、作中ではラミアの影響による怪奇現象が次々と起こる。
一方、『スペル(2020)』は、アフリカ系アメリカ人のマーキスがアパラチア地方の呪術に巻き込まれるという内容であり、悪魔や超自然的な存在よりも、人間の信仰と呪術による恐怖を前面に押し出した作品となっている。つまり、『スペル(2020)』は現実の呪術を扱った作品であり、悪魔ラミアのような架空の存在が登場する作品ではない。
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