映画『殺人の追憶』のネタバレ考察・解説

映画のネタバレ考察

この記事では、映画『殺人の追憶』の結末・ラストをネタバレありで解説し、この映画に関する疑問や謎を分かりやすく考察・解説しています。

映画『殺人の追憶』の結末・ラスト(ネタバレ)

映画『殺人の追憶』の結末ラストをネタバレありで解説しています。この先、ネタバレが書かれているためご注意ください。

映画『殺人の追憶』のラストは、非常に印象的でありながらも、答えが出ないまま終わる衝撃的なものです。

物語の終盤、元刑事のパク・トゥマンは、かつて連続殺人事件が起こった現場を訪れます。すでに事件は時効を迎え、彼は警察を辞めて普通の生活を送っていました。しかし、彼はどうしても事件を忘れることができず、現場に立ち寄ります。

そこで偶然出会った少女に「以前もここを覗いていた人がいた」と言われます。驚いたパクは「どんな顔をしていた?」と尋ねますが、少女は「普通の顔だったよ」と答えます。この言葉を聞いたパクは考え込み、最後にまっすぐカメラを見つめるシーンで映画は終わります。

このラストは、犯人が最後まで特定されず、どこかで普通の人間として暮らしているかもしれないという恐怖を表しています。また、パクの視線は、まるで犯人に向けた「お前を見ているぞ」という無言のメッセージのようにも感じられます。

『殺人の追憶』は、事件が解決しないまま終わることで、観客に強い余韻を残す作品です。現実の事件が長年未解決だったことを考えると、このラストはより深い意味を持つものとなっています。

映画『殺人の追憶』の考察・解説(ネタバレ)

映画『殺人の追憶』に関する疑問や謎を分かりやすく考察・解説しています。この先、ネタバレが書かれているためご注意ください。

映画『殺人の追憶』のラストで少女が言った「普通の顔だったよ」の意味は?

映画のラストで、元刑事パク・トゥマンは、事件現場となった排水溝を訪れます。そこへ通りすがりの少女が現れ、彼に「以前もここを覗き込んでいた人がいた」と話します。その人物の特徴を尋ねると、少女は「普通の顔だったよ」と答えます。

この言葉は、映画の核心を突く重要な意味を持っています。パクは長年、連続殺人事件の犯人を追い続け、異常で特別な犯罪者像を思い描いていました。しかし、少女の言葉によって、真犯人がどこにでもいる“普通の人間”である可能性が強調されます。これは、犯人が見つからずに終わることへの絶望感を表しており、観客にも強い余韻を残します。

また、「普通の顔だったよ」というセリフには、視聴者に対するメッセージ性も含まれています。犯人はすでに日常生活の中に溶け込んでおり、私たちが何気なくすれ違う人の中にいるかもしれない、という恐ろしさを示唆しているのです。

このラストシーンは、事件が未解決のまま終わることで、観客に犯人探しの視点を与える効果もあります。映画を見終えた後も、観る者の心に疑問や恐怖を残し続ける、印象的な終わり方となっています。

映画『殺人の追憶』で、被害者の陰部に桃が入れられてたシーンについて

映画の中で、殺害された被害者の遺体から、桃やボールペンなどの異物が発見される場面があります。この異様な描写は、単なる演出ではなく、本作の元となった「華城連続殺人事件」で実際に行われた犯行を反映しています。

実際の事件では、被害者の遺体に異物が挿入されるという猟奇的な特徴がありました。この異常な手口は、犯人の異常性を示すと同時に、捜査の難航を象徴するものでもあります。映画では、この要素がより恐ろしく、不気味な雰囲気を強調するために用いられています。

このシーンは、被害者に対する犯人の残忍さを明確に表現すると同時に、事件の捜査を混乱させる要因としても機能します。パクたち刑事は、手がかりを得るたびに新たな謎に直面し、真犯人へとたどり着くことができません。この残虐な犯行の描写が、物語の緊張感を高め、観客に強い印象を残す要素となっています。

映画全体を通して、このような細かなディテールが、事件の異常性と、真相を追い求める刑事たちの葛藤を際立たせています。

映画『殺人の追憶』で、元刑事パクがまっすぐ正面を見るラストシーンについて

映画のラストシーンで、パク・トゥマンはかつての事件現場を訪れ、少女から「ここを覗いていた人がいた」と聞かされます。その後、彼は静かにカメラの正面を見つめます。このシーンには、非常に象徴的な意味が込められています。

この視線は、まるで映画を見ている観客に対して向けられているかのようにも感じられます。実際、多くの人がこのラストを「真犯人に向けた無言のメッセージ」と解釈しています。つまり、「お前を見ているぞ」という意味を持つとも考えられるのです。

『殺人の追憶』の元となった「華城連続殺人事件」は、映画公開時点では未解決でした。そのため、監督ポン・ジュノは、このシーンを通じて、もし本物の犯人が映画を見ていたら、その視線を感じて罪の意識を持つようにというメッセージを込めた可能性があります。

また、パクの表情は、刑事としての未練や絶望、そして事件を忘れられない心情を象徴しているとも取れます。彼は刑事を辞め、別の仕事をしているものの、この事件が彼の人生に深く刻まれていることがわかります。

このシーンは、観客にとっても強い印象を残し、未解決事件の恐ろしさや、犯人が今もどこかで普通に暮らしているかもしれないという現実を突きつけるものとなっています。

映画『殺人の追憶』の連続殺人事件の犯人の生い立ちは?

映画では、連続殺人事件の真犯人が最後まで特定されないため、犯人の生い立ちについても一切明かされていません。物語の中では、複数の容疑者が浮かび上がりますが、決定的な証拠がなく、真相は闇の中に消えてしまいます。そのため、犯人の過去や動機、どのような環境で育ったのかについての情報は一切不明です。

ただし、本作の元となった「華城連続殺人事件」については、後年、DNA鑑定技術の進歩により真犯人が特定されました。実際の犯人であるイ・チュンジェは、事件当時ごく普通の市民として生活していました。結婚し、工場で働きながら、誰にも疑われることなく日常を送っていたのです。このことは、映画のラストで少女が語った「普通の顔だったよ」というセリフとも深く結びついています。

映画制作当時は犯人が特定されていなかったため、ポン・ジュノ監督は「犯人の正体は誰でもあり得る」というテーマを強調しました。その結果、映画では犯人の背景について語られることはなく、むしろ「犯人が分からないこと」自体が物語の重要な要素となっています。観客は、パク刑事と同じく、犯人の正体に対する答えが得られないまま、事件の恐ろしさと無力感を感じることになります。

映画『殺人の追憶』は実話を基にした作品?

『殺人の追憶』は、韓国で実際に起こった未解決事件「華城連続殺人事件」を基にした作品です。この事件は1986年から1991年にかけて、韓国・京畿道(キョンギド)の華城市(ファソンシ)で発生し、合計10名の女性が強姦・殺害されました。

事件当時の韓国は、現在ほどの科学捜査技術がなく、警察の捜査方法も未熟でした。映画の中で描かれるずさんな捜査や、容疑者に対する拷問まがいの尋問は、当時の実際の警察捜査を反映しています。捜査は難航し、10件の事件のうち1件の模倣犯が逮捕されたものの、真犯人は特定されないまま時効を迎えてしまいました。

映画公開時(2003年)は、事件が未解決のままだったため、映画は「真実にたどり着けない絶望感」や「犯人が今もどこかで普通に暮らしているかもしれない恐怖」を描くことに重点が置かれました。しかし、2019年に韓国警察のDNA鑑定技術の進歩により、すでに服役中だったイ・チュンジェが真犯人であることが判明しました。この事実は、映画のラストの意味をより深くする要因ともなりました。

『殺人の追憶』は、単なるサスペンス映画ではなく、韓国社会における実際の事件の記録としても高く評価されています。映画が公開されたことで、事件への関心が再燃し、最終的に犯人逮捕への道が開かれたことも、作品の持つ大きな影響力を示しています。

映画『殺人の追憶』の連続殺人事件の真犯人は?

映画では、最後まで真犯人が特定されないまま物語が終わります。刑事たちは複数の容疑者を追いますが、決定的な証拠を得ることができず、事件は未解決のまま時効を迎えてしまいます。そのため、映画の中では「犯人は誰だったのか?」という疑問が残り、観客にも真実を探す余地を残す形となっています。

しかし、現実の「華城連続殺人事件」では、2019年に韓国警察が新たなDNA鑑定技術を使い、イ・チュンジェという男が真犯人であると特定しました。彼は1994年に妻の妹を殺害した罪で服役しており、獄中でDNAが一致したことで事件の真相が明らかになりました。取り調べの結果、彼は華城連続殺人事件の全10件の殺人のほか、他にも14件の殺人と30件以上の性犯罪を自供しました。

この事実が判明したことで、映画のラストの意味はさらに深まりました。刑事パク・トゥマンが最後にカメラの正面を見つめるシーンは、「犯人に向けた無言のメッセージ」だったと解釈されることが多いですが、実際に真犯人が見つかったことで、その視線は「お前はもう逃げられない」という意味にも受け取れるようになりました。

映画が公開された時点では未解決事件としての恐怖と絶望がテーマでしたが、その後の現実世界の進展によって、作品の持つ意味合いが変化したという点も、『殺人の追憶』が特別な映画である理由のひとつです。

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この記事の編集者
影山みほ

当サイト『シネマヴィスタ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ局の映画番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『MIHOシネマ』の編集長も兼任しています。

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