この記事では、映画『Red(2020)』の結末・ラストをネタバレありで解説し、この映画に関する疑問や謎を分かりやすく考察・解説しています。
映画『Red(2020)』の結末・ラスト(ネタバレ)
物語の終盤で、主人公の塔子は、かつての恋人であり不倫相手だった鞍田が病気で亡くなったことで、彼の葬式に夫の村主真や娘の翠と一緒に出席します。塔子は夫や娘と一緒に参列していますが、心の中は複雑な思いでいっぱいです。鞍田の火葬が終わった後、塔子は彼の遺骨を抱きしめます。その時、家族と一緒にその場を離れるのではなく、塔子は一人でその場を去る選択をします。
塔子が一人で去る前には、娘の翠が彼女を呼びますが、塔子はその呼びかけに応えず、その場を離れていきます。この行動には、塔子がこれまでの自分や家庭の役割に縛られた生き方を終わらせ、新しい人生を選ぼうとしている気持ちが込められています。塔子はこれまで家族のために自分の気持ちを抑え、妻や母としての役割を果たしてきましたが、鞍田との再会を通じて、自分の本当の気持ちに気づき、自由に生きたいという思いが強まっていました。
さらに、塔子が公衆電話で夫に電話をかけた後、結婚指輪を外す場面も登場します。これは、彼女が夫との生活に一区切りをつける決意を示しています。鞍田の死をきっかけに、塔子はこれまでの生き方を見直し、自分の心に正直に生きることを選びます。火葬場で鞍田の遺骨を抱きしめるシーンは、塔子が彼との思い出を胸に秘め、新しい道を歩む覚悟を持ったことを表しています。
最後に塔子が「行きましょう」と呟く場面もあります。この言葉には、鞍田の思いを受け入れながら、自分自身の人生を前に進めていく決意が込められています。鞍田は塔子にとってただの恋人以上の存在であり、彼との関係が彼女の心に大きな影響を与えました。「行きましょう」という言葉には、塔子が彼の存在を胸に秘め、彼と共に心の中で生きていく覚悟が込められています。
塔子は、鞍田との時間を大切にしながら、これからの人生を自分の意志で生きていくために一歩を踏み出します。このラストシーンは、塔子が過去を受け入れつつ、新たな人生を歩み始めることを象徴しており、彼女の決意と強い覚悟を示しています。
映画『Red(2020)』の考察・解説(ネタバレ)
映画『Red(2020)』で、ヒロインが家族の元を去るラストの意味とは?
ラストで塔子が家族の元を去る場面は、彼女がこれまでの生活や役割に別れを告げ、自分の意志で新しい人生を歩む決意を示しています。塔子は、不倫相手だった鞍田との関係を通して自分の心の声に気づき、家族に尽くす「妻」や「母」としての役割のみに縛られず、本来の自分でありたいと強く感じるようになりました。この思いが、彼女が一人で去るという行動につながっています。
さらに、ラストシーンで塔子は娘に呼びかけられますが、それに応えずに立ち去ります。これは、決して家族を完全に拒絶する意味ではなく、塔子が母親でありながらも一人の人間としての自由を求める心情の表れです。彼女の行動は、家庭生活の一部としての自分ではなく、塔子個人としての人生を再び選択するための強い決意を表しているのです。
また、塔子が公衆電話で夫と話した後に結婚指輪を外す場面も、彼女が夫との関係に終止符を打とうとする意思を示しています。この象徴的な行動によって、彼女が家庭を守るために押さえていた本心を再び表に出し、自分の人生を取り戻そうとする覚悟が明確に描かれています。
映画『Red(2020)』のラストに映る火葬場にはどんな意味がある?
映画のラストで火葬場が舞台となるシーンは、塔子が過去との決別をし、新たな未来に向かうための象徴的な場面です。火葬場という場所は生命の終わりを迎える場所であり、鞍田との関係に終止符が打たれる場面でもあります。しかし、この場面で塔子は彼の遺骨を抱きしめ、家族から離れて一人で去ることで、鞍田の存在が塔子の心に深く刻まれていることを示しています。彼の思い出を大切に心に抱きながら、自分の人生を再スタートさせる決意がこのシーンに表れています。
火葬場での別れは、塔子にとって苦しい体験であると同時に、彼女の中で鞍田が永遠の存在となる瞬間でもあります。塔子が鞍田の遺骨を抱きしめて一人で立ち去るのは、彼の思い出と共に新たな人生へと踏み出す覚悟を象徴しています。また、家族の元を離れることで、彼女がこれまでの家庭や束縛から解放され、塔子自身の人生を生きる決断を固めたことが示されています。
火葬場という場で、塔子が彼の遺骨を抱きかかえて家族から離れるシーンは、彼女が過去を受け入れた上で、鞍田の思いを胸に秘めて新たな未来へと進む意志を象徴しています。彼女の一歩は、束縛からの解放と、新しい人生の始まりを表しているのです。
映画『Red(2020)』のラストの言葉、「行きましょう」の意味とは?
ラストで塔子が「行きましょう」と呟くこの言葉には、彼女が鞍田の存在を心に留めながらも、新しい人生に向かって進む決意が込められています。鞍田との時間は塔子にとって特別で、彼との関係を通して本当の自分に気づき、心の中に大切なものを見出しました。この「行きましょう」という言葉には、鞍田が遺骨となってしまった後も、彼の影響を受けながら塔子が前に進む意志が込められています。
塔子は、この言葉を口にすることで、鞍田の思いを心に刻んで歩んでいく覚悟を示しているのです。彼がいない現実を受け入れつつも、塔子は彼との思い出を背負いながら、彼とともに歩むつもりで新しい道を進もうとしています。この一言は、塔子が彼と生きていくというよりも、彼の影響が自分の心の中で生き続け、彼の存在が未来に向かう原動力になることを示唆しています。
また、「行きましょう」という言葉は、塔子がこれからの人生で彼と共に歩む決意を持ち、自分の心に従って進む意思を表しています。鞍田の影響と共に新しい人生を歩むことが、塔子にとっての本当の再出発であり、この言葉には彼とのつながりを胸に秘めて前進する決意が込められています。
映画『Red(2020)』の最後に、ヒロインは死んでしまう?
映画のラストで塔子が1人で去っていくシーンは、物理的な「死」を示唆しているわけではなく、彼女がこれまでの役割や生き方から解放され、新しい人生を歩むことを象徴しています。塔子にとって、不倫相手だった鞍田との関係は、彼女の本当の心を呼び覚まし、自分らしく生きることの重要性に気づかせてくれたものです。鞍田の死は塔子にとっての「終わり」と「始まり」を意味しており、彼女が新たな自分として人生を生き直す決意を表しています。
「死んでしまう」というのは、実際の死ではなく、過去の自分との決別、つまり「再生」の意味を含んでいます。塔子は鞍田との別れを通じて、家庭に囚われた自分や世間体のための生き方を終わらせ、自分の心に正直に生きる道を選びます。これまでの生活を「死なせる」ことで、彼女は本来の自分に生まれ変わる準備を整えたのです。
塔子が鞍田への思いを胸に秘めて家族から離れる姿は、彼女が過去を葬り、新しい未来に進む決意を持っていることを象徴しています。したがって、塔子の「死」は、物理的なものではなく、彼女がこれまでの束縛から解放され、自分の人生を取り戻すための精神的な再出発を意味しています。
映画『Red(2020)』で、赤い布が落ちるシーンの意味とは?
公衆電話から夫に電話をかけているシーンで、トラックから赤い布が落ちるシーンは、塔子の内面の変化や決意を象徴的に表しています。赤い布は情熱や感情、そして新たな道への強い意志を象徴しています。この場面で赤い布が落ちることにより、塔子の中に抑えられていた感情や本心が解き放たれ、彼女がこれから進むべき道への決意が固まる様子を暗示しています。
塔子はこの時、結婚生活の束縛や家庭の役割に縛られていた自分から解放されようとしています。赤い布が落ちることで、彼女の心の中に秘められていた情熱や願望が解放され、今後の生き方への象徴的なメッセージとして視覚的に描かれています。また、赤い色は危険と同時に新しい始まりを暗示し、塔子が彼女の心に従って新しい人生を歩む覚悟を表しています。
このシーンは、塔子が新しい道を歩むための心の準備が整った瞬間であり、赤い布の落下によって、彼女が自分の本心を受け入れ、自由な人生を選び取るための転換点となっています。彼女が家庭生活からの解放を象徴するこのシーンは、塔子が自分の意志で道を切り開くことを決意したことを示しています。
映画『Red(2020)』の中のセリフ、「10年前に聞きたかった」の意味とは?
「10年前に聞きたかった」という塔子のセリフは、彼女の中に残る後悔と鞍田への深い思いが込められています。塔子と鞍田は10年前に出会いましたが、当時お互いの気持ちを十分に伝えられず別れてしまいました。もしあの時、鞍田が塔子への気持ちを伝えていれば、彼女の人生は違ったものになっていたかもしれません。このセリフは、過去に叶わなかった愛への切ない後悔を示しています。
物語の中で、鞍田が自分の余命を告げ、塔子に彼の大切な本を託そうとする場面があります。塔子は、鞍田がもうすぐ亡くなることを受け入れたくなくて、彼の本を受け取ることに抵抗を示しますが、鞍田が「無理だ」と告げることで、彼の決意が本物であると理解します。この瞬間、塔子は「10年前に聞きたかった」という言葉を口にし、彼の告白が10年前に届いていれば、自分の人生も彼との関係も変わっていたはずだという思いが溢れ出すのです。
このセリフは、2人が再会して再び愛し合うようになったものの、運命に翻弄された切ない関係を象徴しています。塔子にとって、10年前の別れが今なお心に残り、失われた可能性への未練を感じさせる言葉であり、鞍田への深い愛情と過去への悔いが表れた瞬間です。
映画『Red(2020)』は原作と違う点がある?
映画『Red(2020)』は、島本理生による同名の小説を基にしていますが、映画化にあたりいくつかの違いが見られます。特に大きな違いは、物語の展開やキャラクターの内面描写、そしてラストシーンの表現方法にあります。原作では塔子の心情や心理描写が繊細に描かれており、彼女の内面の葛藤や感情が丁寧に掘り下げられていますが、映画では視覚表現によってこれらがシンプルに表現されています。
また、映画版では時間や物語の進行に制約があるため、原作に比べていくつかのエピソードが端折られている部分もあります。特に、塔子と鞍田の関係が深まっていく過程が原作よりも簡潔に描かれているため、二人の関係に至るまでの心の動きや背景がやや省略されています。このため、原作を知っている観客には、映画の描写がやや急ぎ足に感じられるかもしれません。
さらに、ラストシーンについても異なっており、映画では塔子が鞍田の遺骨を抱きながら家族を離れるという場面が象徴的に描かれています。このラストは、塔子が過去を抱えながらも新たな道を歩む決意を示すものであり、原作の持つ余韻とはまた異なる解釈を観客に与えています。原作では、塔子の心情がさらに深く掘り下げられており、彼女の選択がもたらす未来について読者がじっくりと思いを巡らせることができますが、映画は視覚的に塔子の決意を示すことで、よりダイレクトな印象を与える構成となっています。
このように、映画『Red(2020)』は、原作の持つ繊細な心理描写を映像で表現するために一部の表現が変えられており、塔子の内面の葛藤や物語のテーマがよりシンプルかつ象徴的に観客に伝わるようなアプローチが取られています。
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