この記事では、映画『赤い指』の結末・ラストをネタバレありで解説し、この映画に関する疑問や謎を分かりやすく考察・解説しています。
映画『赤い指』の結末・ラスト(ネタバレ)
物語の終盤、加賀刑事は事件の真相を突き止める。被害者の少女を殺したのは、前原昭夫(杉本哲太)の息子・直巳だった。直巳は、家に遊びに来た少女にイタズラしようとしたが、抵抗されたため、衝動的に彼女を殺してしまった。その後、家族はこの事件を隠蔽しようとするが、加賀刑事の捜査によって次第に真相が明らかになっていく。
事件を隠そうとした母親は、自分が犯人だと偽るが、口紅の証拠によって嘘が暴かれる。さらに、家族の中で唯一まともな判断を下したのは、長年無視されてきた祖母・政恵だった。彼女は、家族が壊れていくのを見ていられず、警察に全てを話すことを決意する。
最終的に、昭夫は現実と向き合い、息子・直巳を警察に引き渡す。昭夫自身も、息子の問題を放置してきた責任を痛感し、これまでの自分の生き方を振り返る。
ラストシーンでは、加賀刑事が母の病室を訪れる。加賀は、家族の絆とは何かを考えながら、去っていく。物語は、事件の解決だけでなく、家族の崩壊と再生の物語として締めくくられる。
映画『赤い指』の考察・解説(ネタバレ)
映画『赤い指』で直巳が言った「親が悪いんだ」の意味
直巳(前原直巳)は、自分が引き起こした事件について、「親が悪いんだ」と発言する。この言葉には、自分の行為を正当化し、責任を親に押し付ける心理が表れている。
直巳は、親に甘やかされ、叱られることなく育ってきた。その結果、他人の気持ちを考えず、自分の欲求のままに行動するようになってしまった。そして、事件を起こしてしまった後も、自分の責任を認めることなく、親の育て方が悪かったからだと主張する。この発言は、「自分のせいではなく、親が自分をこういう人間に育てたのだから、親の責任だ」という歪んだ考え方を示している。
しかし、直巳の言葉は完全に的外れではない。彼の両親、とくに父・昭夫(前原昭夫)は、家庭内で母や息子に向き合わず、問題を見て見ぬふりをしてきた。その結果、家庭は崩壊し、直巳も道を踏み外してしまった。直巳の「親が悪いんだ」という言葉は、単なる責任転嫁であると同時に、家族の問題を象徴するものでもある。
映画『赤い指』で昭夫の母親が認知症のふりをしていた理由
昭夫の母・前原政恵(佐々木すみ江)は、家の中で居場所がなくなり、認知症のふりをすることで家族の関心を引こうとしていた。
政恵は長年、家族に大切にされず、孤独を感じながら生きてきた。特に昭夫は、彼女を疎ましく思い、邪険に扱っていた。そのため、彼女は意図的に認知症のふりをして、家族が自分を気にかけるように仕向けていた。
しかし、政恵は家族が事件を隠蔽しようとしていることに気づくと、自らの行動を変える。彼女は、家族が事件を隠すために犠牲になることを拒み、最後には正しい選択をする。認知症のふりをすることで注目を集めようとしていた政恵が、最終的に家族のために自らの意志で行動するという対比は、物語の重要なポイントとなっている。
映画『赤い指』で、口紅を指先に塗っていたことが殺人を犯していない証拠になった理由
物語の中で、口紅が殺人の証拠として重要な役割を果たす。直巳の母が「自分が事件を起こした」と供述するが、彼女の指先に口紅が塗られていたことが、殺人を犯していない証拠となる。
遺体には口紅がついていなかった。もし彼女が直接手をかけていたのなら、遺体に口紅の痕跡が残っているはずである。しかし、現場にはそのような証拠がなかった。つまり、口紅がついた指で被害者に触れていないことが明らかになり、彼女の供述が嘘であることが証明されたのだ。
この事実から、母親は息子・直巳をかばうために嘘をついたことが明らかになる。そして、事件の真相が少しずつ解明され、直巳が真犯人であることが浮かび上がってくる。この口紅の証拠は、物語の展開を決定づける重要な要素となっている。
映画『赤い指』で息子の直巳が女の子を殺してしまった動機
直巳が女の子を殺してしまった動機は、自分の欲望のままに行動し、それを拒まれたことに対する怒りからだった。
直巳は、家族の中で甘やかされて育ち、責任を負うことなく過ごしていた。そんな彼は、自分の思い通りにならないことに対して強い不満を抱きやすい性格だった。事件の日、彼は近所の女の子を家に連れ込み、イタズラしようとしたが、彼女が抵抗したため、カッとなって衝動的に手をかけてしまった。
この出来事は、直巳が他者の感情を理解しないまま育ったことを示している。彼にとって、相手がどう感じるかよりも、自分の欲求を満たすことが優先されていた。女の子が拒んだことで、彼は自分が否定されたと感じ、怒りに任せて彼女を傷つけてしまったのだった。
事件の後、直巳はその責任を自覚することなく、家族がどうにかしてくれるだろうという態度をとる。彼の言動は、「親が悪いんだ」と責任転嫁する場面にも表れており、この家族が抱えていた歪みが事件を引き起こしたことが明確になる。
映画『赤い指』が「泣ける」と言われている理由
映画『赤い指』が「泣ける」と言われる理由は、家族の崩壊と、その中で見え隠れする「本当の愛」や「贖罪」が描かれているためである。
この物語は、単なる殺人事件を扱ったミステリーではなく、家族の問題が根本にある。昭夫は家庭を顧みず、直巳は甘やかされて育ち、母は息子をかばおうとする。そして、家族の中で孤独だった祖母・政恵だけが、最後に真実と向き合い、事件を解決へと導く。
特に涙を誘うのは、政恵の行動である。彼女は長年、家族から見放されていたが、最後の瞬間に**「正しいことをする」**という選択をする。彼女の行動は、崩壊寸前だった家族に一筋の希望をもたらし、視聴者に深い感動を与える。
また、加賀刑事の冷静でありながらも、人間味のある捜査姿勢も印象的である。彼は事件の真相を追いながらも、家族のあり方に対しても思いを巡らせる。その姿が、単なる犯罪捜査ではなく、「人がどう生きるべきか」を問う作品へと昇華させている。
このように、『赤い指』は事件の解決だけでなく、家族のあり方や、人間の本質を考えさせる作品として、多くの人の心を打ち、「泣ける」と言われる作品となった。
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