この記事では、映画『パフューム ある人殺しの物語』の結末・ラストをネタバレありで解説し、この映画に関する疑問や謎を分かりやすく考察・解説しています。
映画『パフューム ある人殺しの物語』の結末・ラスト(ネタバレ)
映画『パフューム ある人殺しの物語』のラストは、主人公ジャン=バティスト・グルヌイユが自らの運命を受け入れる衝撃的な結末となっています。
グルヌイユは、究極の香水を作るために若い女性たちを殺し、その香りを抽出して完成させました。この香水を振りかけることで、人々は彼に無条件の愛を抱くようになります。彼は死刑を宣告されるものの、処刑場で香水を振りかけると、群衆は彼を崇拝し、判事までもが彼を無罪にしてしまいます。
しかし、どれだけ人々を魅了できたとしても、彼は本当の意味での愛を感じることができませんでした。自分が誰からも愛されたことがないことに気づいた彼は、絶望し、香水をすべて自分に振りかけてスラム街へ向かいます。
そこにいた貧しい人々は、香水の香りに陶酔し、まるで彼を神聖な存在のように崇めます。そして、圧倒的な愛の衝動に駆られた彼らは、グルヌイユをその場で食べてしまいます。彼の体は跡形もなく消え去り、彼はついに自分が「愛される」存在になったのです。
この結末は、彼が香りに支配された人生の果てにたどり着いた、皮肉でありながらも運命的な最期を示しています。
映画『パフューム ある人殺しの物語』の考察・解説(ネタバレ)
映画『パフューム ある人殺しの物語』で、グルヌイユはなぜラストシーンで食べられる最期を選んだ?
ジャン=バティスト・グルヌイユは、驚異的な嗅覚を持ち、究極の香水を作るために数々の女性を殺害しました。彼はその香水を完成させ、人々を完全に魅了する力を得ました。しかし、彼は自分自身が誰からも愛されたことがなく、ただ香りによってのみ他者を支配できることに気付きます。この事実に絶望した彼は、自らの死を選ぶことになります。
ラストシーンでは、彼は大量の香水を自らにかけ、パリのスラム街へ戻ります。香水の効果により、そこにいた人々は彼を神聖な存在と見なし、強烈な愛情を抱きます。そして、彼らは圧倒的な欲望の中で彼を文字通り「食べる」ことになります。
この最期は、彼が初めて「愛された」と感じた瞬間でありながら、同時に完全なる自己消滅でもありました。彼は自身が愛される存在であることを求め続けていましたが、それが実現する唯一の方法が「香り」だったため、その力を使って自らの存在を消し去ることを選んだのです。
映画『パフューム ある人殺しの物語』が気持ち悪いと言われる理由は?
本作が「気持ち悪い」と評される主な理由は、主人公ジャン=バティスト・グルヌイユの異常な執着心と、その行動の狂気にあります。彼は生まれつき人間の感情を理解することができず、ただ「香り」に魅了されて生きていました。特に、若い女性の体臭に異常なほど執着し、その香りを完全に閉じ込めるために殺人を犯していきます。
映画の中では、彼が女性たちの香りを採取するために、冷酷に殺害していくシーンが何度も描かれます。その過程は、視覚的な暴力表現が多いわけではないものの、彼の異常性が際立つことで、観客に強い不快感を与えます。
また、クライマックスでは、彼の作った香水を嗅いだ群衆が陶酔し、大規模な乱交のような混沌とした場面が描かれます。このシーンは生々しく、現実離れした異様な光景のため、観る人によっては強い嫌悪感を覚えることがあります。
グルヌイユは、ただ「完璧な香り」を追い求めた結果、恐ろしい道を歩むことになりました。彼の異常な行動や、香りを巡る狂気的な執着が、本作を「気持ち悪い」と感じさせる大きな要因となっています。
映画『パフューム ある人殺しの物語』は実話を基にした作品?
『パフューム ある人殺しの物語』は、パトリック・ジュースキントによる同名の小説を原作としたフィクション作品であり、実話を基にしたものではありません。物語の舞台となる18世紀のフランスには、実際に様々な猟奇的事件が起こっていましたが、本作のストーリーはそれらの事件とは無関係です。
ただし、グルヌイユのような「香りに異常な執着を持つ殺人犯」は、現実には存在しないものの、映画や文学における典型的なサイコパス像の一つとも言えます。彼のように、何か特定のものに異常なほどの執着を持ち、それを追い求めるあまり殺人を犯すキャラクターは、フィクション作品の中では珍しくありません。
本作が実話と誤解される理由の一つは、18世紀フランスの雰囲気を非常にリアルに描いている点にあります。映画の美術や衣装、当時の社会背景の再現度が高いため、実際に起こった出来事のように感じられることがあります。しかし、物語そのものは完全な創作であり、実在の事件を基にしたものではありません。
また、作品のテーマである「人間の本能的な欲望」や「美と狂気」は、実際の歴史の中でも共通する部分が多いため、よりリアリティを感じさせる要素となっています。
映画『パフューム ある人殺しの物語』のラストシーンは実際に撮影が行われた?
映画のクライマックスでは、グルヌイユが作り出した究極の香水を使い、広場に集まった群衆を完全に支配するシーンが描かれます。その結果、人々は理性を失い、巨大な乱交のような場面が展開されます。このシーンは強烈なインパクトを持ち、多くの観客に衝撃を与えました。
このシーンの撮影において、750人ものエキストラが実際に全裸で演じたとされています。CG技術が発達している現代において、このような大規模な実写撮影が行われたことは珍しく、映画の持つ独特の雰囲気を際立たせる要因となっています。撮影は厳重な管理のもとで行われ、参加したエキストラたちもこの場面の持つ芸術的な意義を理解したうえで参加していたと言われています。
このシーンが実際に撮影されたことは、映画のリアリティを高める要因となりました。もしCGで作られていた場合、観客にとってはどこか作り物のような印象を与え、物語の異様な雰囲気が損なわれる可能性がありました。そのため、実際の人間の動きを使って撮影することで、観る者に強烈な印象を残すことに成功しています。
このシーンは映画の中でも最も記憶に残る場面の一つであり、グルヌイユの香水が持つ圧倒的な力と、人間の本能的な欲望を象徴する重要なシーンとして描かれています。
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